部下とのコミュニケーションの特効薬は?

ある50代の男性が会社の人間関係に悩んでいらっしゃいました。肩をすくめて、うつむき加減で、まるで、小さな子供のように。どのような関係性に悩んでいるかというと、「上司と部下のコミュニケーション」とのこと。社内に相談窓口があるので、産業医に相談したそうです。ところが、その産業医からのアドバイスは・・「コミュニケーションを良くしてください」だけだったそうです!
なんとも笑えないお話です。
量子コンピューターの発達で、3年間で20年分の変化が来るという学者もいるそうです。すでに、大量リストラ時代が到来。会社の合併で人財の流動化が加速。自分の業務の他に「転職者」への業務指導が加わって、ストレスを感じている管理職が増えています。
ITの目覚ましい普及で、リアルなコミュニケーションが少なくなってきて、本音で話す機会が減少したことから私たちがご提案する「組織展望コンサルティング」では、個人と組織の両方からアプローチし、「心の風通し良くするコミュニケーションで人とチームを活性化」しています。特に、「メンタルケアの基本」、「パーソナリティ特性」を理解して頂き、個別に話し合って特性をつかみ、若手や転職者の希望を引き出すことを目的とした「リーダーシップ研修」をしています。マネージャーが指導する悩みについてグループディスカションをして頂いたときのことを一例に、現場の雰囲気を少しでも感じて頂ければと思います。
■部下の対応は男女で異なる!?
ある日のメンバー:Aさん(30代女性) Bさん(30代男性) Cさん(40代男性) 講師:伊東
A:能力・指導力について悩んでいる(困っている)。
B:与えられるものだというのが間違っている。(きびしいご意見です)
講師:「~という見方があるよ」とアプローチしたり、「課題」を与えたりしてみるとよいですよ。
A:「~があるよ」という部分がわからない(笑)
講師:皆さん(私も含めて)先輩や上司から「課題」が与えられた経験がありますよね。その「課題」を通じて、調べる姿勢を見たり、フィードバックしたりして、「姿勢」を見てみてください。(自分自身の経験について具体的に説明・・内容は割愛します)。
B:最近の人は若いのにおとなしい。がつがつしていない。
A:女性は壮大な目標を持っているが、目の前の目標がない。「何をやったらいいんでしょう?」と言われるが、「どうしたらいいんでしょう?」(笑)。
B:僕は、「どっかいいところがないかな」と思っても、ダメなところが目につく。
A:私は逆。でも、適性とか「課題」がわからない。
講師:自分が「やってもらいたいこと」がないかどうか考えてみるといいですよ。例えば、データを調べて、資料を作るとか。
A:女性は「形」になると「達成感」があるよう。でも、自分でやった方が早い。
(「自分でやった方が早い。という意見、本当に多いです・・」
B:やってもらいたいことはない!(またまた厳しいご意見が・・)
講師:「課題」を与え、フィードバックしながら、勉強会をして発言したりすること(アウトプット)で、結局、コミュニケーション能力が培われ、自分も成長しますよ。
さらに、若手のストレスのことに話が及びます・・。
A:若手のフラストレーションがたまっているのはわかる。どうしたらいいのか?
講師:相談者の内容がスキルに関することであれば、「道具的サポート」を、メンタル面でのケアを求めているのであれば、「情緒的サポート」をするとよいですね。
「道具的サポート」とは、具体的な解決方法についてのアドバイスで、「情緒的サポート」とは、相手がどのように感じ、考えているのかを「感じ取る」こと。
男性は、ゴールやスキルに関しての解決方法を知りたいし、女性は、それよりも「感情面」を理解してもらいたい場合が多かったりしますよね。
いずれにしても、まず、相手のお話をさえぎらないでじっくり聴くこと。
そのときの、何を言っても大丈夫という雰囲気があるといいですよね。
A : 特に、男性は、「理論」好きですよね(笑)
B : ” 気持ちをくみ取る”って苦手~(笑)
A:若手のストレスを感じているのは・・具体的には、人事のこと(ローテーションや配属のこと)とか、自分の適性のこととか・・。
講師:人事面でのフラストレーションを感じているようなら、上司に「背景を説明してあげて欲しい」というように、直接働きかけるなどの方法がありますね。
適性については、普段から、観察をして、一人ひとりに与えられた才能=GIFTについて伝えれてあげるようにするといいですよね。
C : 最近、「あっ、その表現いいよね!」とか意識して話かけるようにしてます。
■頼りになる上司像って?
さらに、みなさんに
Ⅰ上司からのアドバイスで嬉しかったこと。どのような上司だと頼りになるかということ、
Ⅱ部下としてつらかったことについて「グループディスカション」して頂くと・・
Aさん(30代女性)は
Ⅰ特殊な業務を与えてもらって嬉しかった。
Ⅱ辛いことは流す。あまりにも辛いことが多すぎる。(う~ん、悲しいですね・・)
Bさん(30代男性)は
Ⅰ信頼して任せてもらったこと。「あーやれ。これやれ」と機械的でなく、課題を与えられ、解決に向けていってくれること。
Ⅱ理不尽なこと?正しいと認めてなくて、感情的なこと。(理論的に物事を進めてくれると安心のようですね)
Cさん(40代男性)は、
Ⅰ失敗したときに助けてくれる。結果解決のために奔走してくれると救われる。
Ⅱ信頼されないことはストレスになる。(「サポートがある」ということに安心されるようですね)
三人三様の意見がでてきたところで、あらためて、今の現状について感じたことをシェアして頂くと・・
C:今は「寄せ集め」の人材なので「自分の居場所」がなくなると思っている人もいる。次の仕事が待っているということを見せてあげればいい。
という意見が・・。
対話を重ねることで、だんだん、若手が「キャリアの展望」=「キャリアパースペクティブ」を持てるようにすることが大事だという気づかれたようです。
講師:一緒に働く社員に対して、お客さんに接するように、「感謝の気持ち」を表すことが時には必要。ねぎらいの言葉は何よりも嬉しいもの。一人ひとりに「希望の光」を見出せるように是非してみてください。
■部下になりきってロールプレイ
このようなプロセスを得て、いよいよ、参加者それぞれが、部下・後輩役の①転職の経緯②仕事内容について想像し、そのシナリオに基づいてロールプレイを行いました。特に、男女の違い、「パーソナリティ特性」も理解した上でアドバイスをするというものでした。あらかじめ、年齢や男女差、転職歴などいくつかあるパタンを設定して、その中から選択し、部下の立場になって、自由に発言して頂いたところ・・
C:設定はITコンサルタントから転職した27~28才の男性。これまで仕事を任されてきたので自信満々。しかし、現状はうまくいっていない。上司から怒られて、「こんなことでいいのだろうか?」と日々ギャップに耐えられなくて悩む。「どうすればいいのですか?」「この仕事に向いていないんでしょうか?」「そんなに僕ってダメですか?」と先輩に訴える。など・・。
突然のロールプレイであったが、それぞれが部下役の設定を自由に想定し、考えられるストレスについて「その人」になりきって演技をし、大いに盛り上がった。一人約5分という短い時間ゆえ、傾聴や助言についてチェックすることは難しかったのですが、ある程度、自分自身の傾向(長所・短所)について自覚できたようでした。
例えば、
悩みのポイントについて充分ヒアリングをしていなかった。どうしても一方的にしゃべってしまう(Cさん)。
・気休めになり、落ち着くのでまた相談できそう(Aさん)
・説明することは難しい!!自分の話をした方が、イメージがつかめる(Bさん)など。
やはり、男性は、「理論好きですよね」(笑)
その後は、特性に合わせた「しかり方」が大切であること、「ほめたり、しかったり」のバランスについて話し合いました。
■部下のコミュニケーションで大事なこと(まとめ)
「メンタルケアの基本」、「パーソナリティ特性」を理解して頂き、個別に話し合って特性をつかみ、若手や転職者の希望を引き出すことを目的とした「リーダーシップ研修」の一部をシェアさせて頂きました。「部下のコミュニケーション」に関する人財育成の現場の雰囲気について、少しはご理解頂けたでしょうか?
●「部下とのコミュニケーション」で大事なポイントは
まず、自分の「価値判断」を入れずに、相手の立場になりきって物事を考えるということです。「禅マインド」ともいうべき、相手を受け入れてあげるという姿勢が大事なのです。
特に若手や転職者は、新しい職場環境に慣れるまでに、仕事や人間関係によるストレスを感じる人も多いのです。「自分の居場所」がないと感じていないかSOSを察知して、早めに「個別面談」をしてどのように感じ、考えているのかお話する機会をもつことです。それが「離職率低下」につながることがとても多いのです。
●部下との「個別面談」で大事なポイントは
1.相手の話を「さえぎらない」で聴く
2.部下の「パーソナル特性」(感情、思考・行動)をよく観察する
3.実際に「コミュニケーション」をしながら、反応を見る
この3点が大切です。
さらに、「答え」を急がない!という姿勢も大事です。
陥りやすいワナとして、自分がやった方が早いので、すぐに反応を得ようとしたりしてしまいがちです。また、「観察」して注意するものの、「スキル」や「どういう感情でいるのか」の把握が難しいと感じる男性は多いようです。知識を得て、頭でわかっていても、実際に指導する場合は、難しいものです。実は、「タイプ別対応方法」を知って、個別にコミュニケーションをすることは、自己理解につながり、それがあって、はじめて他者理解につながるケースが多いのです。少しずつ、少しずつ、実践あるのみです。
(株)キャリパース代表
心×才能 可能性を拓く専門家
伊東明子
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