「般若心経」:人生の謎にせまる

「人間とは何者なのか?」古今東西、時間、空間を超えて、人々の中で熱く燃え続けてきた”問いかけ”に対して、佐治晴夫さんは、「宇宙のカケラ 物理学者、般若心経を語る」の中で次のように述べられています。

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自分のものでありながら決して見ることのない顔に代表されるように、この世界での最大の謎は「自分自身」のようです。とすれば、自分自身をどのように認識すればいいのでしょうか。それは、自分が見ている相手、対象物を通して、自分自身を想像するしかできなさそうです。自分自身は自分自身からできているのではなく、自分以外のものからできている。この視点こそが、現代の科学的世界観です。すべては独立した存在ではなく、「相互依存」だということの発見です。

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「般若心経」から始まる「一陽来福」でも「相互依存」については述べました。

相手があってはじめて自分の位置づけが見えてくる。始まりは小さなひとつぶの物質。この世界にあるものは根源の部分でつながっていて、そこから枝分かれしてそれぞれの姿になっている、そこから生まれた私たち人間は、自然の分身、自然の一部。つまり、「自分」=「自(然)+分(身)」だと解釈されています。夜空に輝く星に終焉があるように私たちにも誕生、終焉がある。ところが、私たちは他者の誕生と終焉に立ち会うことができても、自分自身の誕生と終焉には立ち会えない。だから、謎は深まるばかりだと。

そこに登場するのが仏陀。人間の体という実在的物体を含めて、人間は世界をどのようなプロセスで理解しているのか。私たちはどのようなものからできていて、どのような在り方をしているのか。そこには「五つの要素」があり、ある「特定の法則」によって作用、関わり合うことによって存在し、私たちの認識が存在しているとしました。仏陀はそれを「五蘊(ごうん)」とし、「色」「受」「想」「識」の五つの要素で構成されるとしました。

「色」とは形が見える物体のことで、一般的には身体や物質のことをいいます。残る四つは見えない心の世界、内面を構成する要素で、「受」は、外界から刺激をうける感覚器官の働き、感覚作用のこと。「想」は、外部から受け取った情報を構成する働き、つまりイメージのこと。「行」は、何かをしようとする意思の働きで行動の前提となる心的作用。「識」は、識別作用を含む認識の働きのことをいいます。佐治さんはこれを「脳の働き」にたとえて解説されています。

目の前にバラの花があるとすると、形があるので明らかに物体。(「色」)

その「色」であるバラから発する光を網膜でとらえる。(「受」)

網膜でとらえられた光は電気信号として脳に送られ、バラのイメージが描かれる。(「想」)

その結果、心の作用として、バラの花であると判断。(「行」)

ここで初めてバラの花であると認識されるのですが、ここから「観察者の心」が大きく関わった認識が生まれるというのです。つまり、”いい香りのするバラ”、”誰かに送りたいバラ”、”いつかは枯れてしまうバラ”というふうに。(「識」)。この段階に至って、「色」という物理的実体と観察者の関係が、心を通してつながる。これが仏陀の考え方です。

下記の「五蘊」イメージ図は、この一連の流れをもとに私が作成したものです。

「色」という物体を通じて、感覚器官を通じ(「受」)→イメージ図が描かれる(「想」)→バラの花であると判断(「行」)ここまでは、程度の差はあるものの、淡々と行われます。しかし、ここから先は同じバラの花でも「観察者の心」によって解釈の仕方が大きく異なるということが理解できるのではないでしょうか。良い気分のときに見たバラはうっとりするかもしれませんが、状況によっては感じ方が全く違うかもしれませんね^^。

一方で、「般若心経」は、そのような「五蘊」は全て錯覚であって、全く実体のないものであると否定したのです。人間が認識するものは全て実在せず、その存在を否定することによって、私たちが”今”感じている苦しみや悲しみも「錯覚」である。だから、心が救われるとしたのです。全ては「錯覚」!?・・いきなり”今”感じている苦しみや悲しみも「錯覚」であると言われても・・なんだかしっくりこないのではないでしょうか。これが「般若心経」が多くの日本人に知られていながら、内容があまり理解されていない要因かもしれません。

「般若心経」は、「苦」からの解放を唱えたものです。「苦」とは、私たちが「思い通りにならない」と思っていることで、これは状況によって「苦」になったり、ならなかったりする。全ては人間の「心の幻想」によるものだからというのです。これが、「般若心経」の根底にある「空」の思想です。全ては「空」であることを受け入れることによって、人々を癒し、励まそうとしたのが「般若心経」なのです。ですので、「空」の思想はとても重要なのです。

「空」については、次回またお伝えします。

心身浄化、セラピー効果の高い「般若心経」。「般若心経」から始まる「一陽来福」もご覧ください。

 

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(株)キャリパース代表
心×才能 可能性を拓く専門家
伊東明子

 

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